起業家が会うべきは“優秀なキャピタリスト”ではなく“腹をくくったGP”一択

結論(TL;DR)
・プレシード・シードの資金調達では、最初に会うべき相手はキャピタリストではなく GP(General Partner)一択。意思決定権があり、投資委員会にも最も強い影響力を持つため。
・キャピタリストはあくまで“サラリーマン”として評価軸に沿って動き、トレンド寄りの案件に寄せたフィードバックになりがちで、起業家を本質からズラすリスクが高い。
・一方GPは、LPへの責任と投資先の成長という“結果”で評価される存在であり、プロダクトの本質・事業の将来性を軸にフラットに意思決定する。よって資金調達の場では 最初にGPへ直接アクセスする戦略が最も合理的である。

“誰に話すべきか”という問題はなぜ起きるのか

資金調達フェーズでスタートアップが直面する悩みのひとつが、
「VCの誰と話すべきか?」 という点です。

プレシードやシードの起業家にとって、最初の資金調達は事業の未来を左右する重要な意思決定。
ただ、その相談相手を間違えると、事業の軸がトレンド寄りに曲がったり、投資委員会向けの“通りやすい案”に矯正されたりと、本来の価値からズレる危険性があります。

私はここを強く誤解している起業家が非常に多いと感じています。


国内独立系VCで話すべき相手は「GP」一択である理由

結論から言うと、
初期スタートアップが話すべき相手は GP(General Partner)一択 です。

理由は極めてシンプルで、VCにおける最高意思決定権者だから

もちろん投資委員会という場は存在します。しかし実態として、

  • 投資委員会での発言権
  • 投資判断への影響力
  • 起案の推進力

いずれも GP > キャピタリスト です。

極端な話、GPが「投資したい」と判断すれば、投資委員会はほぼ通ります。
(形式的な承認プロセスはあっても、実質はGPの意思が通る。)

だからこそ、最初に接触すべきは「意思決定者であるGP」であり、これは事業会社の営業構造にも共通する原理です。


なぜキャピタリストではいけないのか:組織構造を理解するとわかる話

ここからは一度、話を事業会社に戻します。

私は新卒時代、未上場の中小企業・スタートアップ向けにブランディング広告を売る営業をしていました。
このとき徹底されていたのが、

“必ず社長アポを取れ。担当者では決済は動かない。”

ということです。

担当者には担当者のKPIがあり、自分の評価軸から外れた提案は通りません。
一方、社長は会社の最高意思決定者であり、必要だと思えば即断します。
だから社長アポが最も効率的だった。

この構造は、VCでもまったく同じです。

キャピタリストは「サラリーマン」である

キャピタリストが追うのは、あくまで“自分の評価軸”です。
ファンドによって違いますが、

  • 名刺交換数
  • ソーシング数
  • 面談数
  • 投資委員会上げ数
  • 流行トレンドへの理解
  • 次に来るテーマの収集

など、KPIに沿って行動します。

ここで重要なのは、

キャピタリストは“評価される動き”をするのであって、
必ずしも起業家にとって最善のアドバイスをするわけではない

という点です。

だからトレンドがSaaSなら「SaaSっぽい方向」に、
GenAIなら「AIを組み込め」
というフィードバックをしがちで、軸がブレて見えるのです。


一方のGPは「結果だけ」で評価される

GPは根本から立場が違います。

GPの評価者は「LPと投資先の成果」です。
KPIはありません。
ソーシング数でも面談数でもなく、
投資した会社が伸びたか、それだけで評価される。

だからGPは、トレンドや説明のしやすさよりも、
プロダクトの本質・市場の深さ・経営者の強さなど、
長期で勝てる構造に対してフラットに判断します。

この“時間軸の違い”が、フィードバックの質の決定的な差を生みます。


起業家は「主人公」であり、キャピタリストの“正しそうな意見”に沿う必要はない

起業家は常に、
自分の事業・ユーザー・プロダクトを誰よりも深く理解している存在です。

一時的なトレンドや“投資委員会向け”の言い換えで
プロダクトを曲げてはいけません。

もしキャピタリストの意見を丸呑みする必要があるなら、
そのキャピタリストこそ起業家になればいいのです。

起業家は主人公であり、外部の意見に左右される存在ではありません。


この記事のいちばん重要なポイント

Point
・初期フェーズで話すべきVCの相手は、キャピタリストではなくGP(最高意思決定者)である
・キャピタリストは“評価される行動”をするサラリーマンであり、トレンド寄りの偏った助言になりやすい
・GPは結果だけで評価されるため、本質的な事業価値と長期的成長を基準に判断する
・起業家は他人の意見に振り回されず、プロダクトの本質と自分の軸を守るべき存在である

まとめ:資金調達のとき、最初に会うべき相手は誰か

トレンドや投資委員会事情に左右されない、
本質的な価値を見抜く意思決定者。

その条件に当てはまるのは、
GPだけです。

もちろん例外もありますが、
プレシード・シードのスタートアップこそ、
最初に狙うべきはGPのカレンダーです。


FAQ

Q1. キャピタリストと話すのは無意味なのですか?

A. 無意味ではありません。ただし初期フェーズでは、評価軸に縛られた発言が多く、事業を“投資委員会向け”に寄せた助言になりがちです。

Q2. GPとつながるにはどうすればよいですか?

A. 投資先の紹介、上場企業オーナー・起業家ネットワーク、前職の繋がりなど「直接紹介」が最も速いです。Coldメールも通りますが、構造理解が必要です。

Q3. キャピタリストのフィードバックはどの程度参考にすべきですか?

A. 参考にはしてよいですが、鵜呑みにはしないこと。トレンド寄りの助言や“説明しやすさ重視”の修正提案が多いため、事業の本質を見失うリスクがあります。

Q4. GPでもトレンドに流されることはありますか?

A. もちろんあります。ただしGPは最終的にLPと投資先に対して結果で評価されるため、短期トレンドより長期価値を見抜くインセンティブが強いです。

Q5. 起業家は結局誰の意見を信用すべきですか?

A. 最終的には自分自身です。外部の声を聞きつつも、プロダクトの本質と顧客の現実を軸に意思決定することが最も大切です。